デルタ式英語音源の使い方(重音テト英語音源を含む)
デルタ式英語の使い方
まえがき
概要
この記事はデルタ式汎用英語リスト及びその派生リストを基に作られた音源の使い方講座です.
記事の中では「重音テト英語CVVC」(デルタ式汎用英語リスト2番準拠)を例に打ち込みの仕方を解説します.
打ち込みの流れ
補助ツールpresampを使う場合(→presampとは)
1.midiまたはustでメロディを打ち込む
2.英単語で譜割をする(慣れてきたら省略可能)
3.英単語を発音記号に変換する.
手打ちで調整する場合
1.midiまたはustでメロディを打ち込む
2.英単語で譜割をする(慣れてきたら省略可能)
3.英単語を発音記号に変換する.(慣れてきたら省略可能)
4.単語間の接続を考慮して子音を移動させる
5.母音のみの音とh行の音を連続音化する
6.残りのノートをCVVC化する
7.語尾ノートを設定する
8.クロスフェードの設定をする
デルタ式英語リストはpresampでのサポートを前提に構成されているため,presampを使わない場合圧倒的に作業が増えます.
ただし,「presampが導入できない」,「macのためpresampが使えない」,「presampの出音が気に入らない」,「同じustで日本語音源と組み合わせて使いたい」等の場合は手打ちにて対応する必要があります.
※presampで日本語音源と英語音源を同じustで使う機能は2015年4月現在開発中ですので,そのうち併用可能になります.
説明用のサンプルustはこちらです.
基本情報:母音一覧
eI,aI,aU,OI,oUなどは全て2文字で1セットになります.
ex)[seI][aI k]など
juについてはCVの時は1セットですが,VCやVCVはuと兼用です.
ex)[tju][u k]など
基本情報:子音一覧
presampを使う打ち込み
1.midiまたはustでメロディを打ち込む
とりあえず音程とリズムが入力されたustを作ります.
オリジナル曲・原曲カバー勢はmidiを読み込むだけでOK
翻訳カバー勢はとりあえず日本語版のustを用意します.
サンプルustの01みたいな感じです.
2.英単語で譜割をする(慣れてきたら省略可能)
歌詞を英単語に置き換えていきます.
基本的には全てのノートに最低1つは母音を置いてください.
(もちろん例外もありますので,子音だけのノートが出来ても神経質にならなくていいです.)
サンプルustの02番みたいな感じです.
3.英単語を発音記号に変換する.
歌詞を発音記号に変換します.
あさくら氏にて公開されているプラグイン「TTEnglishInputhelper」を利用するか,下記のサイトなどを使って単語を発音記号に置き換えて行ってください.
サンプルustの03-1番みたいな感じです.
presampを使っている場合はこの時点で再生できますので,ここでべた打ち完了となります.
以降ご自由に調声してください.
英語を学ぼう http://www.manabo.net/
英単語からSAMPA形式に変換できます.
・ダブルクオーテーション(")やパーセント(%)は不要な記号なので削除してください.
・bizz氏にて公開されているプラグイン「僕が考えた最強の(ry」を使うと不要な記号が削除されて簡単に流し込めます.
・"Q"はデルタ式engでは"A"と表記されているので書き換えてください.
weblio http://ejje.weblio.jp/
発音記号も表示される翻訳サイトです.
・IPA形式で表示されるため,上述の母音子音一覧を元に自分でX-SAMPAに変換してください.
・冠詞や熟語など,時々発音記号が表示されないことがあります.
presampを使わない打ち込み
4.単語間の接続を考慮して子音を移動させる
ここでは「How I wonder what you are」を例に解説します.
what youを「わっとゆー」と読むより「わっちゅー」と呼んだ方が英語的だと思いませんか?
今ust内でwhat youは
[w@t][ju]
と入力されています.
これを
[w@][tju]
に置き換えます.
母音だけのノートの前の音が子音で終わる場合,子音を移動させる
ということです.
ただし,母音をはっきり発音させたいなど,子音を移動させない方がいい場合もあります.
5.母音とhが付く音を連続音化する.
「How I wonder what you are」の続きから.
テト英語音源では,母音とhが付く音は連続音(VCV)形式で収録されています.
これを書き換えます.
ノート中
[haU][aI]
を
[- haU][aU aI]
とします.
4,5が終わったustがこちら
6.残りのノートをCVVC化する(基本編1 母音→子音箇所)
「How I wonder what you are」の続きから.
CVVC化する前にUTAUのQuantizeを(なし)にします.
まずは
[aU aI][w@n]
を分割して
[aU aI][aI w][w@n]
にしてみます.
まず[w@n]と言う音はテトは持っていません.そこでまず[w@n]を[w@]に変えます.
こんな感じ.
[w@]の左端の青い線(図の赤線)が[aI w]の長さになります.
[aU aI]の右端をctrl+shiftを押しながら左にドラッグします.
図のように[aU aI]が2つになりました.
また[w@]の左端の線が少し右に寄りました.
[aU aI]の歌詞を[aI w]に変更します.
#画像は誤字で[aU w]になってるけど見逃して.
次に[w@]の短くなった左端の青線を元の位置に戻します.
[w@]の音のプロパティを開き,原音値ボタンを押します.
図のように先行発声の値をオーバーラップにコピーします.
[w@]の左端が元の位置に戻りました.
これで[aU aI][w@]→[aU aI][aI w][w@]の変換完了です.
6.残りのノートをCVVC化する(基本編2 子音→子音箇所)
「How I wonder what you are」の続きから.
[w@n][d3]を考えます.
テト英語音源では子音→子音の音は単語の頭と単語の最後の音しかありません.
従って
[w@n][d3]
は
[w@][@ n][d3]
と分割します.
[aU aI][w@]の分割の時は[w@]の頭に長さをそろえましたが,
子音→子音箇所では長さをそろえません.
図のように[w@]の右端をctrl+shiftを押しながら左にドラッグし,
[d3]の左端を飛び越えて分割します.
分割されました.
新しくできた[w@]の歌詞を[@ n]に変更して分割完了です.
ここまでのやり方通り,
[d3][w@]→[d3][3 w][w@]に
[w@][tju]→[w@][@ t][tju]に分割します.
どちらも母音→子音の分割ですね.
ここまで分割したのがこちら.
7.語尾ノートを設定する
「How I wonder what you are」の続きから.
[Ar][R]を分割します.
英語には子音終わりの音があるため,子音終わり専用の音があります.
[Ar][R]は
[A][A r-][R]のように分割します.
長さは適当で大丈夫です.
単体の[A]は母音なので,直前の[tju]と連続音で接続します.
これで[How I wonder what you are]の歌詞分割が完了です.
8.クロスフェードの設定をする
分割完了した「How I wonder what you are」をすべて選択し,[p2,p3クロスフェード]ボタンを押します.
ここまでで,だいたいべた打ち完了です.
9.CVVC化する(応用編1 単語の頭で子音が連続する箇所,休符後)
単語の頭で連続する子音とは「onset consonant cluster」と呼び,日本語の拗音の様なもので,全部で33種類あります.
日本語で「か行」と「きゃ行」を別々に収録するように
「r行」と「pr行」「br行」…と全部別々に録音しても構わないのですが,
録音量が倍近く増えるため,テトの英語リストでは省略しています.
「twinkle twinkle little star」を例に説明します.
譜割を見てみます.
[twIn][kl@][stAr]などの音が子音連続で始まっている単語です.
#厳密には[kl@]は単語の頭ではありませんが,klは単語の頭にも登場しうるため収録されています.
[R][twIn]を分割していきます.
まずノートの左端を見るために[R][wI]に書き換えます.
[wI]の左端にあわせて,[R]を分割します.
歌詞を[- tw]に変更します.
[- tw]のプロパティを開きます.
休符を分割したノートは音量とモジュレーションが空欄になっていることが多いです.
モジュレーションは必ず0にしましょう.
UTAUの処理の都合所,子音だけの音はすごくうるさくなってしまいます.
これを抑えるためにフラグ欄に"p0"と記入してください.
[wI]のプロパティは母音→子音の分割でやったのと同じです.
先行発声値をオーバーラップ値にコピーしてください.
これで
[R][twI]
が
[R][- tw][wI]に分割されました.
9.CVVC化する(応用編1 単語の頭で子音が連続する箇所,フレーズ中)
「twinkle twinkle little star」の続きから.
[wIn][kl@]を
[wI][I n][kl][l@]に分割していきます.
ノートの左端を見るために[kl@]を[l@]にします.
[l@]の左端にあわせて[kl]に分割します.
[kl]も子音だけの音なので,フラグ"P0"を忘れずに
[wIn][kl][l@]になりました.
[wIn][kl]→[wI][I n][kl]の分割は,基本編2で書いた子音→子音箇所の分割と同じです.
[kl]の左端を追い越して,[I n]を分割します.
10.母音が2つ以上入っているノートを分割する.
「twinkle twinkle little star」の続きから.
このフレーズ内には[lIt@]というノートがあります.
presampを使う場合はこのままでも勝手に歌ってくれますが,手打ちでは無理なので
[lI][t@]に分割します.長さはだいたい均等でOKです.
以降基本的な母音→子音のCVVC化手順に従って,
[lI][I t][t@]と分割してください.
ここまでの手順を踏まえて,「twinkle twinkle little star」を分割したのがこちら.
クロスフェードをかけてべた打ち完了です.
11.子音単体音に分割する.
「up above the world so high」を例に説明します.
出来るところまで今までのルールに沿って分割していくと,
[w3ld][soU]箇所で止まると思います.
[w3][3l][ld][soU]又は[w3][3l][ds][soU]と分割したいところですが,[ld]も[ds]もありません.
そこで[w3][3l][d][soU]と分割します.
[d]の長さは子音→子音箇所分割と同じく,[soU]の左端より長め
子音のみの音なのでフラグに"p0"を入れましょう.
11.単語末の子音連続に分割する.
「arm」「start」「warld」などなど,英語には子音連続で終了する単語がたくさんあります.
単語の終わりの子音連続を「coda consonant cluster」と呼び,120種類あります.
語尾音のように,[A rm-][A rt-]と収録しても構わないのですが,とても録音が大変なので,[A r][r m-]のように分割して使います.
coda consonant clusterはフレーズの最後で使う設定しかされていませんが,原音設定を追加することによりフレーズ中で使用することも可能です.
テトのcoda consonant clusterはフレーズの最後で使う設定しかされていませんが,フレーズ中でもなんとか使えます.
ここでは先ほどの[w3ld][soU]を例に分割例を示します.
図のように
[w3][3 l][l d-][soU]と分割します.
分割時のポイントは,フレーズ中のonset consonant clusterと同じなので省略します.
12.母音の語尾ノートを設定する.
「up above the world so high」の続きから.
フレーズの最後[haI][R]は母音で終わっています.
英語音源はUTAUの仕様上,フレーズの最後に必ず語尾音をつけないと正しく発音しません.
[haI][R]→[haI][aI -]と書き換えます.
この時休符の書き換えなのでモジュレーションを0にすることを忘れずに.
13.以上分割手順を踏まえた実例
「like a diamond in the sky」の分割例です